慶友人工関節センター長 泉田良一
センター長 泉田良一
日本も本格的な高齢社会を迎えました。ところが、いざ長寿時代になってみてどうでしょうか? 関節の軟骨が磨り減り、痛みや、変形を生じる方が実に多くなっているのです。これに伴い、人工関節手術のニーズは増加しています。しかし、高齢者も多いこの手術、決して簡単に取り組むべきではありません。そこで当院では専門の施設、慶友人工関節センターを開設すること致しました。
関節の痛みから解放されて楽しく実りある人生を過ごしたい方は、是非とも当センターにお問い合わせください。

■慶友人工関節センターのその後(2019年)

平成18年に慶友人工関節センターを設立し、各々の患者さんにマッチした丁寧な治療を行うことを心掛けてきました。その結果、今迄手掛けた初回人工股関節手術約1000例について、再手術を要するような深部感染はゼロ、術中対応を要した骨折2例、脱臼は高位脱臼、系統疾患、術後譫妄・転倒などを含めて10例という成績を得ております。
しかし人工股関節手術は身体にメスを入れる訳ですから、良い点がある一方、欠点もあります。良い点は、何と言っても痛みが楽になり、自立した人生をエンジョイできるようになることです。一方問題点は
1、人の身体に金属等の異物を入れる訳ですから、どうしてもマッチしない点があることをぬぐい切れない(生体材料とは)。
2、身体にメスを入れることは、いわば戦争を止めるために、小さな戦争をするようなものであり、その為のマイナス面が残らないか(MISとは)。
3、合併症が出てしまった場合、もしかすると手術をやらなかった方がましだったという事態が起こりかねない(合併症とは)。
その他に治療期間、費用など、いわゆる経済的な問題が起こりえます。 

この10年間に人工股関節手術は3万件が7万件へと倍増していると言われています。超高齢社会ですから手術件数が増加することはある意味当然ともいえますが、あるいはアメリカの様に医療が他の産業並みに「聖域なき」変貌を遂げて、本当は必要のない手術まで行われていないかという危惧も覚えます。情報化社会とは、ご自身がより良い正確な情報を得て、ご自身で判断しなければならない社会でもあります。 

もしこれらの点について関心がおありでしたら、連絡いただくか、あるいはこのホームページの人工股関節の歴史の項をご覧ください。


センター受付

■センターの目標:関節機能回復への総合サポートの提供

当センターでは関節の機能障害を専門的に治療する事が可能です。関節外科の専門医(整形外科医)、手術の麻酔や術後の痛みの管理をする麻酔医、病棟や手術室の看護師、手術後のリハビリを行う理学療法士、薬剤師、ソーシャルワーカーそのほか大勢の技師や病院の職員、全員が一日も早い皆様の関節機能の回復のためにサポートいたします。

■一人ひとりに適した医療を提供します

病名は同じでも、症状は患者様一人ひとり大きく違います。ですから、マニュアル通りの方法だけでは、本当に患者様に適した治療が行われているとは限らないのです。私たちは、患者様全員の痛みからの解放と生活の質の向上のため、患者様一人ひとりに最善と思われる治療を提供します。


診察室

■最先端の手術を行います

患者様が、手術を受けるときや手術を受けた後の負担をなるべく軽減するために、最少侵襲手術を行います。これは従来に比べて傷口が2分の1もしくは2分の3の大きさですむだけでなく、筋肉などに与えるダメージも極力軽くする手術方法です。
また当院の人工関節手術はクラス1000と呼ばれる非常にクリーン度の高い手術室(クリーンルーム)で行われます。我々は人工関節手術には必要不可欠とも言える装備と考えていますが、十分なクリーンルームはまだまだ日本では少ないのが現状です。

■人工関節手術とは?

歯が駄目になると義歯を入れますが、それと同様に機能しなくなってしまった関節を金属、ポリエチレン、セラミックなどで作られた人工関節に置き換えることです。端的にいえば埋め込み式の入歯のようなものと言えると思います。

人工股関節の一例 人工膝関節の一例

■人工関節手術は日本でどのくらい普及しているのでしょうか?

代表的なところでは人工股関節の手術が年間3万件、人工膝関節が4万件前後と言われています。おそらく皆様が想像されていたより多いのではないでしょうか。

■どういう場合にその手術を考えなければならないのでしょうか?

義歯なら普段物が噛めなくて困ったり、痛みが耐え難いと感じた時に、入れようとするでしょう。人工関節もそれと同じように、毎日痛むなど、日常生活に支障を来たす時、手術を考慮する事となります。
関節の病気はそれが直接生命にかかわるようなものではありませんので、あくまで御自分の意思で決めていただいて良いのです。

■危険性は?

手術である以上危険性が全く無いとは言えません。例えば人工股関節の場合、感染、脱臼、血栓症など、人工膝関節の場合は感染や血栓症などの危険があります。それらの危険性を極力減らすためにも、専門施設の設立が望まれるところなのです。

■費用はどのくらい?

日本は皆保険制度であり、高額医療費の払い戻し制度をはじめ、様々な救済措置も用意されています。詳しくはケースワーカー室までお尋ねください。

■マスメディアでの紹介

泉田先生が「毎日新聞 2019年1月16日号」で紹介されました。
変形性股関節症に関する質問に回答をしています。